人と自然が関係しあう照明の提案

照明探偵団シンポジウム in 仙台(場所:せんだいメディアテーク)
2012年10月6日
宮城大学3回生(当時)大塩世奈さん



震災当時はまだまだ夜が寒い時期で、石油ストーブで暖をとっていました。反射板がついた石油ストーブの火の明るさでも、家族の顔が見えるほどの照明の代わりになります。
この時、普段は暖をとるためだけのものが、場合によっては光としての利用価値もあるのだと感じました。
また、私の家には太陽光パネルが設置してあります。そのおかげで震災時、携帯電話の充電や炊飯をすることができました。
この経験から、「光をエネルギーにする」ことと、自然のすごさを賢く活かすネイチャーテクノロジーに興味を持ちました。

私は、人と自然が関係しあう照明の設置を提案します。
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環境に応じた、適正バランスの「光量」と「色温度」を自動で感知する照明の設置
《提案動機・理由》

1. 現代は自然の中の光が十分に利用されておらず、人工の光であふれている。
夜の地球の画像を見ると日本列島がくっきり浮かび上がるほど照明で満ちあふれている。
ガスや電気がなかった時代、四季や昼夜の変化を敏感に感じとり折々の風物詩を楽しむ豊かな感性や情緒を育んでいた。
現代に生きる私たちはその時代に戻ることはできないが、太陽の光のリズム沿った光の調整や空を光の面として捉える「天空光」、「月明かり」「星明かり」「雪明かり」などの自然照明を有効活用しながら心地よい暮らしができる方法がたくさんあるのではないか。

2. 人工光による人間への影響
照度と色温度は朝・昼・夜で大きく変化している。
光量や色温度の変化に伴って人間の生活リズムも変化するという研究がなされていることから、自然のリズムに合わせた照度や色温度の照明が必要ではないか。

<補足>『夜にぐっすり眠るための要件:照明計画』
(1)暗さが眠りを誘うスイッチになります。暗くなると、脳で睡眠を誘発するメラトニンが作られます。メラトニンは、リラックスを担う副交感神経の働きも助けてくれます。
(2)光の強さや色で睡眠時の役割分担を強い光はメラトニン分泌を抑制し目覚めを誘い、弱い光は逆に眠りを誘います。また、青白い照明の方がメラトニン分泌が抑制されて目覚めやすくなり、逆に赤みの強い光ではメラトニンの分泌抑制が小さく眠りやすくなることも分かっています。
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3. 人間の視覚特性に合った照明計画がされておらず、光量や色温度がバラバラである。
震災以降、街の光は全体的に落とされたが、未だに光量が多いと感じられる照明が多く、その差は激しい。特に、暗い所に置かれた明るすぎる自動販売機。極端な光量の差により自販機の周りの暗さが強調され、人がいることに気付けず犯罪が起きやすくなっている。
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実践例と期待できること
《実践例》

1. 朝〜夜の自然のリズムに同調した明るさを選択・変化させる。

例えば時間帯によって、以下のように照度と色温度を変化させる。
〔夕方〕夕暮れ時、太陽の光が残っているように感じられる照度。
〔夜〕夜の美しい景観を保つ照度。
〔深夜〕深夜の安全を確保する照度で、温かみが感じられる色温度。
また、自然光を取り入れやすい採光計画や朝日を浴びられる機会を生み出すような外部空間設計を取り入れる。

2. 眩しさを抑え、人間の視覚特性に合わせた適度な明るさにする。
 例えば間接照明を使用するなど。


《期待できること》

1. 省エネ効果

色温度の変化はLED照明で実現が可能。
北田さんが提案した「階層順に消灯する装飾看板」のように、状況や時間帯によって光量を変化させたり、点灯・消灯させることで省エネができるのではないか。
また、自然光を活用できるきっかけとなる。

2. 人にやさしい光環境づくり
人間の生体リズムを取り戻し、心地よい健やかな生活をおくることができる。
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