けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

新年早々言い訳にになってしまいます。昨年は、仕事の忙しさにかまけて皆さんにお約束したプレゼントが途切れてしまいました。大変申し訳ありませんでした。今年は約束を果たせるよう頑張ります。

アメリカ中心の経済を発端に、世界中の社会・生活に破綻が生じています。私は、この問題は経済だけの問題ではなく、私たちのものの見方や考え方に基づく生き方(生活)への問いであるように思えてなりません。

明治以降の日本は、欧米のものの見方や考え方に目を向け、多くの物事を吸収すると同時に、それまで築いてきた日本のものの見方や考え方による多くの物事を排斥してきました。押しのけ退けてきた中で私が気になるのは、自然を慈しみ、自然に学び同化し、人の和を尊ぶものの見方や考え方です。
現在私たちに突きつけられている地球規模の環境・平和・経済問題などを考えたとき、私はこれがキーワードになるように思えてなりません。

間が創り出す物事は、私たちのものの見方や考え方に基づく生き方(生活)への思いと願いのカタチではないでしょうか。カタチは見えても、思いや願いは見えないもの。
なんて思っていませんか。
この見えないものを見せるのがデザインではないでしょうか。
この一年、日本が見えるものを探したいと思います。
私に付き合ってくださいますか?

はハレの日の食べ物。
稲の霊が宿り、食べる者に力が与えられると考えられています。神様への供物で、神様が宿ると言われています。
餅と言えばお正月。
お正月と餅と言えば鏡餅です。
鏡餅といってもいろいろな形、いろいろな説があるようです。

私の知っている鏡餅は、母方の祖父から聞いたものです。
鏡餅の形は、三種の神器の銅鏡からきたもの。重ねてあるのは、一年をめでたく重ねられますようにという願いを込めたもの。
一番上の(一度実がなると4〜5年以上落果しないそうです)は、代々(橙)家が続くという語呂合わせの縁起物。
その下の串柿(柿は縁起の良い長寿の木と言われます)は、全部で十個。外側に二個づつ、内側に六個なのは、外はニコ(二個)ニコ(二個)、中(仲)ムツ(六つ)まじくの語呂合わせ。
餅の下の昆布は、喜ぶ(よろ昆布)の語呂合わせ。また昆布は、夷子布(えびすめ)と呼ばれ、七福神の恵比寿に掛けて福が授かる意味もある。最後は、表面は緑色ですが裏面は白い裏白(うらじろ)。裏がえししても色が白いことから、心に裏がなく清廉潔白で、夫婦共々白髪になるまでの長寿を願う。
これが、私の鏡餅の見えないものの正体です。

は、祖父から聞いたこのことが、私が考えるデザインに影響している大きな一つだったのではないかと感じています。
また、これからのデザインに欠くことのできない一つではないかと考えています。

●記:橋ヶ谷佳正「デザイン・レター〜思いと願いのカタチ〜」
2009年1月12日

橋ヶ谷佳正(はしがや・よしまさ)

岡山大学大学院 教授

[ 経歴 ]
静岡県生まれ。
1981年京都市立芸術大学専攻科修了後、沢村徹デザイン研究所、西脇友一ヴィジュアルデザイン研究室、橋ヶ谷タイポグラフィ研究室を経て、1993年より現職。
NPO法人日本タイポグラフィ協会会員

[ 受賞歴 ]
ラハチ国際ポスタービエンナーレ、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ等に入選。岡山後楽園築庭300年記念シンボルマーク公募展奨励賞。水島港インターナショナルトレード協議会シンボルマーク最優秀賞。日本観光ポスターコンクール入選。
など。



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