は、デザインが大好きです。
デザインというよりは、「デザインすること」が大好きです。と、言った方がよいかもしれません。「デザイン」という言葉を知らない人はいないのではないでしょうか。そして、普段の生活の中でも使っているのではないでしょうか。

しかし、「デザイン」は特別なもので、デザインする人(デザイナー)は特別な才能や技術を持っている人だと思っているのではないでしょうか。はたして、そうなのでしょうか。
私は、そうではないのではないかと考えています。

「専門は。」と聞かれ「デザインです。」と答えると、
「芸術家ですか。」と言われます。

私はそんな時いつも、
「芸術家の部分もありますが、芸術家ではありません。」
と言っています。
絵を描いたり、物を作ったり、という造形表現者としては、芸術家かもしれません。しかし私は、表現するまでに、考えたり、工夫したり、試行錯誤する人間のプロセス行為がデザインではないかと考えています。この行為は、私たちが普段の生活の中でいつも行っていることではないでしょうか。芸術家だけが行っていることではありません。

は、鳥でも虫でも犬でもありません。
私は人間です。
人間以外の生き物が何を考えているか分かりませんが、生ある生き物の中で、自ら考え、工夫し、物やコトを創り出す力を持っているのは、人間だけではないでしょうか。私たちは、この力を人間の幸せや豊かさのために使い、現在の生活・社会を築きあげてきたと言えます。デザインの目的でもあり、デザインは人間生活・社会に大きな貢献をしてきたのです。

しかし、人間の幸せや豊かさの獲得の代償として、私たち人間は環境問題を背負ってしまったと言えます。この環境問題は、自然環境の問題がクローズアップされがちですが、人間の価値観や生き方の問題ではないかと、私は考えています。

たちが使っている物や行っているコトは、全て人間のデザイン力で生み出してきたものです。私は、環境問題の解決にデザイン力を活かさなければと思っています。

今一番必要なデザイン力は、人間が創り出す物・コトにより人間の価値観や生き方が変わり、それによりまた物・コトが変わるという人間と物・コトとの関係を自覚し、物・コトを見、考え、判断し、取捨選択していくことではないかと思っています。人間による表現は、表現者が考え、工夫した結果です。
表現はメッセージです。デザインはメッセージです。
メッセージですから読み取ることができます。

「デザインすること」は、送り手と受け手を結びつけることです。私はそう考えています。
「デザインすること」は、コミュニケーションです。
コミュニケーションには、自分とのコミュニケーション、自分と他者とのコミュニケーションがあります。こう考えると、私たち人間は、みなデザイナーとなるのではないでしょうか。

のっけから変な理屈をこねてしまったかと思いますがお許しください。これは、私のデザインについての考え方と思いです。
これから毎回、私たちの身近なところに目を向け、デザインと生活や社会について皆さんと考えていけたらと思っています。ご意見、反論などいただけると幸せです。

また、CDケースに入るサイズのカレンダーを制作いたしますので、お気に召したらプリントアウトし、カットしてお使いください。

●記:橋ヶ谷佳正「デザイン・レター〜私たち人間、みなデザイナー〜」
2008年5月20日

橋ヶ谷佳正(はしがや・よしまさ)

岡山大学大学院 教授

[ 経歴 ]
静岡県生まれ。
1981年京都市立芸術大学専攻科修了後、沢村徹デザイン研究所、西脇友一ヴィジュアルデザイン研究室、橋ヶ谷タイポグラフィ研究室を経て、1993年より現職。
NPO法人日本タイポグラフィ協会会員

[ 受賞歴 ]
ラハチ国際ポスタービエンナーレ、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ等に入選。岡山後楽園築庭300年記念シンボルマーク公募展奨励賞。水島港インターナショナルトレード協議会シンボルマーク最優秀賞。日本観光ポスターコンクール入選。
など。



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