ベルギーでは、木枯らしが吹きすさぶ頃、聖ニコラウス祭の季節を迎えます。西欧(オランダ・ベルギー)では毎年12月5日の晩に聖ニコラウス祭を祝います。

聖ニコラウスは4世紀頃の東ローマ帝国小アジアのミラの司教で、学生・子供の守護聖人とされていましたが、聖ニコラウス崇拝がヨーロッパ各地に広まる過程で、船乗り、商人の守護神ともなりました。

12月6日が彼の聖日で、5日の晩に袋をかついだお伴 ZWARTE PIET(ズワルト・ピート)を連れて子供のいる家庭をまわり、1年間良い子であればプレゼントをし、悪ければ叱ります。

16世紀の宗教革命後この風習を廃した新教国もあるのですが、オランダ・ベルギーでは大人もプレゼントを交換する国民的行事として、聖ニコラウス祭を大切にしています。

アメリカでは、オランダ人が移民した折に、オランダ語・フラマン語で聖ニコラスのことを「SINTERKLAAS」シントルクラースと発音するので聖ニコラスがサンタクロースに変わり、日にちも12月25日に代わっていったようです。

おなじみの「SANTA CLAUS」のイメージは、オランダの伝承に他の伝承が混じり合って19世紀のアメリカで定着したもの、その語源はSINTERKLAASです。

聖ニコラスも白い髭に赤と白の服を着ていますが、その他に片手に金の杖を持ち、背の高い赤の帽子をかぶり、その帽子の真ん中には十字架のマークが金の刺繍で施されています。

また、友人によると、ヨーロッパでは赤と白の色合いは結婚のお祝いに贈られるもので、赤と白は " blood & milk " を象徴していて、ミルクは食べ物に困らないように、また血は子孫繁栄を願っての意味が込められているとの事でした。

日本でも、赤と白の対の色は、赤い血に対する白い「乳」だったと聞きます。古代語では、血も乳もともに「ち」と発音されていて、どちらも人間の「いのち」の根源ということで、赤と白が神聖視されていたそうです。

ベルギー王国は漢字による当て字で「白耳義」と表記され、「白」と略されます。年間を通して雨が降る日が多いのですが、冬時間の時期は、さらにどんより曇り空の日が多くなります。

ベルギーに、飛行機で夕方に着く便で来て見るとわかるのですが、日が落ちて暗くなってくると一斉に道路のオレンジの照明がついていきます。道路には、だいたい50Mごとにオレンジの照明が設置されています。ベルギーの税金が高い理由もわかる一場面ですが、おかげで、夜、車で走っていてかなり先方まで見えるので安心です。

ベルギーに住んでみて、何でベルギーの国旗の色が黒・黄・赤なのか理解できるようになってきました。黒は「力」、黄色は「円熟」、赤は「勝利」を表しているそうです。もちろん、国旗の色の背景には歴史的な意味も含まれています。

この時期、クリスマスの装飾でアントワープの街は賑わいます。日の沈んだ街に、暖かく点された街灯は、まるで宝石のように街に賑わう人々を照らしてくれているかのようです。

●記:出原美津江「世界の色彩〜アントワープから色と光の風景」

出原美津江(いではら・みつえ)

画家
王立アントワープアカデミー美術大学、アントワープ在住

[ 経歴 ]
岡山市生れ。
京都・成安女子短期大学卒業後、渡仏。パリ、アカデミーグラン・シュミエール美術学校、王立アントワープアカデミー美術大学に学ぶ。



[ ベルギー王国 ]
ベルギー王国は、西ヨーロッパの立憲君主制の連邦制国家。隣国のオランダ、ルクセンブルクと合わせてベネルクスと呼ばれる。欧州連合(EU)加盟国で、その本部が首都ブリュッセルに置かれている。

オランダ・ベルギーの位置と国旗


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